【映画】光(監督・脚本 河瀬直美)

 

エンドロールが終わるまで、誰も席を立とうとしなかった。

映画「光」(監督・脚本 河瀬直美)の余韻は、

映画が終わってもなかなか消えていかなかった。

 

音声ガイドの女性と視力の失いつつあるカメラマンのラブストーリー、

という内容の紹介文のこの映画。

ラブストーリーにして欲しくなかったというのが私の感想だ。

ラブストーリーというだけで映画を見る前・映画を見た後も、

トーリーを理解した気がしてしまう。

「愛」ていう無敵最強な武器で、一気にこの話の深みも片付けられてしまう気がする。

 

疾うにないものを、まるであるかのように振る舞い続ける。

崩れ始めた時には想像力で、狂いで「現実」を構成しなすことができていたかもしれない。

でも崩れきってしまったら、受け入れて真っ暗な時をくぐり抜けてその先の光を見せられて、ただ歩くんだ。

齢を重ねた人にそう言われた気がした。

 

素敵な映画だった。何よりも美しかった。

「部屋に差し込む夕日、夕日を部屋に拡散させるプリズム。」

音声ガイドが伝えるのはここまで。

目が見えなくても、プリズムの光を感じることはできる。

光を感じるからこそ、美しいと人は思う。

言葉に置き換えられることは多くない、と思う。

 

映画を観る意味・絵を書く意味・写真を撮る意味は、

そこにあるのだろうか。