【日曜美術館】花森安治=しあわせの形を共有する天才(2/19放送)

 

「しあわせの形を共有する天才」

 

連続テレビ小説とと姉ちゃん」花山伊佐次のモデルとなった編集長・花森安治

戦後まもない頃から現在に至るまで、女性から多くの支持を受けている雑誌、「暮らしの手帖」を作った方である。

日曜美術館という番組を見て、花森安治という人間は「しあわせの形を共有する天才」、そんな印象を受けた。

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しあわせの形を共有する天才は、

暮らしにあるしあわせの象徴を見逃さない。

 

町を歩くとね、露店がだっと出はじめてきた

 

そこでね 真っ先に出てきたのはフライパン

 

本当に光り輝いていた

 

フライパンがでてきた時には

 

どんなに僕ら気持ちが明るくなったか

 

僕ははっきりその時に

 

これはやっぱり暮らしというものが一番大事だと言うことを

 

理屈ではなく腹の底まで分かってもらおうとおもった。

      

                        (花森安治

 

しあわせという言葉から社会的な成功をどうしても想像してしまいがちだ。

でも、本当にしあわせだと感じる瞬間は、

 

目玉焼きを焼いたとき、黄身が中心にきた

                        (深澤直人

 そんな瞬間かもしれない。

人は自分に正直でないことも往々にある。

しあわせの形をつかむことすら、簡単ではない。

 

しあわせの形を共有する天才は、

メッセージが読者のおなかの底まで届くよう、

細かな配慮や努力は欠かさない。

同時に、最終的にメッセージをどう受け取るかは相手に委ねる。

人の存在を尊重している。

 

りんご箱を使って勉強机をつくるという記事が掲載されたことがあったが、

その勉強机は大切な人にあげるプレゼントのよう。

出来上がった勉強机に座っては、立ち上がる。

また、嬉しそうに座り直す。

そんな女の子を花森が嬉しそうに見ている様子が思い浮かぶデザイン。

  

廃材や既存のものを使ったデザインはよくあるが、

 

廃材でもつくれるということではなく、

 

豊かなものの作り方を伝えている

                       (深澤直人

 

 

物がない時代においても、

物をただ作る方法を伝えるのではなく、

美しいもの作る方法を伝える。

人はたとえお金がなくても美しいものに囲まれて暮らす価値のある存在なのだと、

人間の存在そのものを肯定する。

と、同時に美しいものは君たちの手で作り上げるのだと、鼓舞する。

 

「君たちはどうするのか」

 

女性が社会進出するようになってきた時代に花森が書いた記事の最後の一文。

自分の意見を述べつつ、最終的な判断は個人に託す。

だからこそ、人にどとく。

 

 

花森という人は、

しあわせの形を共有する天才だと思った。

 

 

最後に花森の素敵な言葉。

 

美しいものは、いつの世でもお金やヒマとは関係がない

 

みがかれた感覚と、まいにち暮らしへの、しっかりとした眼と、

 

そしてたえず努力する手だけが一番うつくしいものを、いつも作り上げる

 

                          (花森安治

 

 

 

おまけ。

世田谷美術館花森安治の展示会(2017/02/11~2017/04/09)をやっているらしい。

 

 

 

*1:NHK 日曜美術館「“暮し”にかけた情熱 花森安治30年間の表紙画」2/19 放送